校長通信「響きあう学校」

校長通信 響き合う学校 2015年終業式式辞

平成27年度2学期終業式式辞2015.12.21


 皆さん、おはようございます。1年のなかで最も長い学期、2学期も今日で終業式を迎えます。
 「夜、寝る時には自分の本を読みなさい」というのは創立者の寺部だい先生の言葉です。人生において大切なものの一つは「振り返り」です。今日の一日がどんな一日であったか、この1週間がどんな1週間であったか、振り返ることによってやるべきことが見えてきます。今日は家に帰ったら1日、1週間とともに、2学期全体も振り返って下さい。
 今日、渡される通知表には成績、欠課時数、出欠席の記録、そして担任の先生の所見などが書かれています。みなさんの2学期の学校生活の記録です。数字も所見もよく読んで、できればノートや日記に「振り返り」をまとめて下さい。「振り返る」ことが一歩前進になり、明日につながっていきます。明日につながるのは今日の「振り返り」です。明日の一日を今日の「振り返り」で作り出して下さい。
 人生は山登りと一緒です。一歩歩けば、一歩頂上に近づいていきます。頂上をめざして皆さんが、今日も明日も、一歩、一歩歩いていくことを期待しています。
 受験勉強や部活動、自主活動、家の手伝いなどで忙しい人が多いことも知っています。それでも「振り返り」の時間の中で、でてきた課題をしっかりとやるように努めて下さい。
 また、冬休み中であっても建学の精神である「真心、努力、奉仕、感謝」の4大精神を意識した生活をして下さい。「真心、努力、奉仕、感謝」の4大精神も冬休み中の「振り返り」の課題にして下さい。
 今日の話は「大海の一滴」という言葉についてです。
 大海の一滴というととるにたらない、という意味にも使われますが、大海の一滴も大切な一滴です、という意味で話します。
 これはインドで貧しい人たちのために生涯を尽くしたマザーテレサさんがよく使用した言葉です。
 マザーテレサさんの業績を評価する人が貧しい人は世界にはたくさんいます。もっと大きな運動で貧しい人を無くす運動をしたらどうですか、という問いをした時にマザーテレサさんは次のように答えています。
 「わたしたちのしていることは大海の一滴に過ぎません。ですが、もしこれをやめれば大海は一滴分小さくなるでしょう。」
 大きな運動は他の人にやっていただければよい。私たちは目の前で苦しんでいる人を救う、そのことに精一杯やりたい、それも大切なことです。そんな意味だと思います。
 人間一人一人のできることは限られています。しかし、大きな海をつくる一滴になっていることは間違いありません。社会のために、世界のためにできることは誰にでも必ずあるはずです。
 自分にできる「大海の一滴」を是非、考え、勉強を継続して下さい。
 マザーテレサさんに関してもう一つの話を紹介します。
 ある時、マザーテレサさんは極限までお腹を空かしている、8人の子どもをかかえた家族のもとに一食分のお米を届けにいきました。
 その家の母親は、マザーテレサさんからお米を受け取るとお米を半分に分け、その一つを持って外へ出ていきました。しばらくして、戻ってきた母親に「どこに行ってきたのですか、何をしてきたのですか」と尋ねました。母親は「隣の家族もおなかをすかしています。だから半分のお米を隣の家族に持って行きました」と話したそうです。家を訪ねるとそこにも同じ8人の子どもがいて、食べるものがなかったそうです。
 富のある人が分け与えるのでなく、貧しくても分け与えるということを当然のごとく振る舞う人にマザーテレサさんは驚かされます。そして優しさ、喜びの意味をさらに考えるようになります。
 優しさとは何か、喜びとは何か、時々考えてみることも大切です。冬休み、マザーテレサさんに関連する本を読むことも勧めます。
 映画も時間があったら観て下さい。冬休みに薦めるのは今、公開中の「杉原千畝(すぎはらちうね)」という映画です。1986年生まれ、岐阜県の八百津町出身の戦前、戦中の外交官。第2次世界大戦中ヨーロッパのリトアニアという国でナチスドイツの迫害から逃れてきたユダヤ人の人たちに対して日本政府の訓令に反し、大量の通過ビザを発行し、約6000人にのぼる人たちの命を救ったといわれている人です。杉原千畝さんが発行したビザによって繋がった命は現在、世界中で6万人だと言われています。日本がなぜ、第2次世界大戦という戦争に参戦したのか、なぜ負けたのか、戦争の悲惨さ、愚かさ、そしてその中でも杉原千畝という人ができたこと、やったことなどが描かれています。
 今年の9月には国会で安保法案が成立しました。今一度、戦争とは何か、平和とは何か、一人一人の国民に何ができるかを考えるヒントになる映画です。
 最後にあるクラスの通知表にある生徒さんの次のような発言が紹介されていました。
 「受験生になって勉強の面白さがわかってきた」
  素晴らしい言葉で印象に残りました。
 学ぶ事は生きること、生きることは学ぶことです。いつまでも学ぶことを忘れないで欲しい」
 生きる事は学ぶ事、学ぶ事は生きることです。
 明日から始まる16日間の冬休みの一日一日を計画的に、有意義に過ぎして下さい。休み中の事故には気をつけて下さい。みなさんよい年を迎えて下さい。1月7日の始業式に元気に登校する皆さんに会えることを楽しみにしています。「大海の一滴」、何ができるか考え続けて下さい。
 平成27年12月21日 2学期終業式式辞 安城学園高等学校長 坂田 成夫