校長通信「響きあう学校」

校長通信 響き合う学校 2015年7月号

H27年7月号

響きあう学校      安城学園高等学校だより2015.7.14(火)第147号

安城学園高等学校長 坂田 成夫
   

     優劣のかなたに     大村はま

優か劣か/そんなことが 話題になる。そんなすきまのない つきつめた姿。
持てるものを 持たせられたものを 出し切り、生かし切っている そんな姿こそ。
優か劣か 自分はいわゆるできる子なのか できない子なのか、
そんなことを 教師も子どもも しばし忘れている。
思うすきまもなく 学びひたり 教えひたっている。そんな世界を 見つめてきた。
一心に学びひたり 教えひたる。それは優劣のかなた。
ほんとうに 持っているものを生かし、授かっているものに目覚め、打ち込んで学ぶ。
優劣を論じあい 気にしあう世界ではない。
優劣を忘れて 持っているものを出し切っている。
できるできないを 気にしすぎていて 持っているものが 出し切れていないのではないか。
授かっているものが 生かし切れていないのではないか。
成績をつけなければ 合格者をきめなければ それはそれだけの世界。
それがのり越えられず 教師も子どもも 優劣のなかで あえいでいる。
学びひたり 教えひたろう 優劣のかなたで。

【今月の作者と詩 大村はま】 

 1906年、横浜生まれ。日本の国語教育のパイオニアと言われます。新渡戸稲造、安井哲氏が学長を務めた東京女子大学で学び、1923年に長野県諏訪高等女学校へ就職。以来公立中学校の国語教師一筋に57年間勤め、1980年に退職。2005年96歳で逝去。主な著書は「授業を創る」「教室の魅力を」「教えるということ」「大村はま国語教室」「教師大村はま96歳の仕事」「ともし続けることば」「忘れえぬことば」「22年目の返信」「優劣のかなたに」など多数。世界の教育に貢献のあった人に与えられるペスタロッチ賞を受賞しています。
 大村はま氏は教育の本質を次のように語っています。「教育は、ただ単に学ぶのではない。全身全霊を集中して学ぶ。ただ単に教えるのではない。力の限りを尽くしてひたすら教える。できる、できない。優か、劣か。そんなことは全く問題ではない。教師も、生徒も、共に無我の境地にひたりきっている営み」。「優劣の彼方に」は亡くなる1週間前に書いた遺作詩です。詩の最後の三行、「学びひたり 教えひたろう 優劣のかなたで」は私たち教員がいつも肝に命じておかなければならない言葉です。