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校長通信 響き合う学校 2016年2月号

 H28年2月号


響きあう学校      安城学園高等学校だより 2016.2.24(水) 第153号

安城学園高等学校長 坂田 成夫

 

【夕焼け 吉野 弘】

 いつものことだが 電車は満員だった。

 そして いつものことだが

 若者と娘が腰をおろし としよりが立っていた。 

 うつむいていた娘が立って としよりに席をゆずった。 

 そそくさととしよりが坐った。

 礼も言わずにとしよりは次の駅で降りた。

 娘は坐った。

 別のとしよりが娘の前に 横あいから押されてきた。

 娘はうつむいた。

 しかし 又、立って 席を そのとしよりにゆずった。

 としよりは次の駅で礼を言って降りた。

 娘は坐った。

 二度あることは と言う通り 別のとしよりが娘の前に 押し出された。

 可哀想に 娘はうつむいて そして今度は席を立たなかった。 

 次の駅も 次の駅も 下唇をギュッと噛んで 身体をこわばらせて―――。

 僕は電車を降りた。 固くなってうつむいて 娘はどこまで行ったろう。

 やさしい心の持ち主は いつでもどこでも われにもあらず受難者となる。

 何故って 

 やさしい心の持主は 他人のつらさを自分のつらさのように 感じるから。

 やさしい心に責められながら 娘はどこまでゆけるだろう。

 下唇を噛んで つらい気持ちで 美しい夕焼けも見ないで。 

 

【今月の作者と詩 吉野 弘】   

1926年山形県生まれ。高校卒業後、就職。徴兵検査を受けるが 入隊前に敗戦を迎える。戦後、結核の闘病生活から詩作を始め、1953年、谷川俊太郎さん、大岡信さんらと詩誌「櫂(かい)」に参加。代表作多数。私の好きな詩は「祝婚歌」「I was born」「雪の日に」「生命は」「歳時記」「虹の足」「夕焼け」など。特に紹介した「夕焼け」での「他人のつらさを自分のつらさのように感じる」という表現はたぶん吉野弘の詩づくりの原点だと考えます。吉野 弘さんの詩は優しいものが多く、心が洗われます(「夕焼け」は昨日の卒業式の式辞のなかでも紹介しました。)

 

【想いを形に、想いを行動に】

 今年の卒業式式辞では、世界各地で紛争や戦争、貧困問題があり、そのなかで子どもたちが戦火の中で逃げ回り、学校へ行きたくても行けず、食べるものもなく、ひもじい思いをしている子どもが多数いる現実を卒業生にはあらためて認識して欲しいと考えました。今年の夏には参議院議員選挙があり、選挙制度の改正で18歳以上の方に選挙権が付与されます。今年の卒業生は制度ができて初めて投票する世代、歴史の扉をあける世代になります。日本の進む行方をよく考えて必ず投票所に足を運んで欲しいという願いの式辞にしました。(詳細は式辞を参照下さい)

 想いを形に、想いを行動につなげて欲しいと願っています。それが成長していくことだと考えています。

 

【立ち読みにまつわる最も美しい話 】  昨年の11月の朝日新聞に「立ち読みにまつわる最も美しい話」が紹介されていました。エッセイストの鶴ヶ谷真一さんが書いたものです。短い文章ですが、示唆に富む話ですので紹介します。

「19世紀、欧州のある街で、貧しい本好きの少年が毎日、書店のウインドーに飾られた1冊の本を眺 めていた。読みたいけれどお金がない。ある日のこと、本のページが1枚めくられていた。翌日も1枚め くられていて、少年は続きを読んだ。そうして毎日めくられていく本を、少年は何ヶ月もかかって読み終 えることができたそうだ。おとぎ話のような、書店主の計らいである。」

 私が示唆に富むと想ったのは書店主の計らいです。たぶん、書店主には少年が該当の本を読みたいということが分かったと想います。貧しいということも知ったと思います。でもプレゼントすることなく少年に本を読ませる方法をとったのです。このことが少年にとって素晴らしい何ヶ月間になったと思います。少年は毎日、明日は物語がどう展開するのか、と想像して書店に通ったと考えます。毎日の想像力が、少年を成長させていたと考えます。書店主にすれば「毎日めくる」ということは、大変なことですが「時間をかける」「手をかける」「繰り返す」「続 ける」という手順をとることによって少年に素晴らしい何ヶ月間をプレゼントしたと思います

 

【新聞のコラム河北新報(宮城県)コラム2月22日】

 気仙沼市と宮城県南三陸町で構成する広域行政事務組合が運営するリアス・アーク美術館。たびたび津波に襲われてきた地域の歴史を、東日本大震災以前から企画展などで紹介してきた▼震災では大きな揺れで建物が損壊。学芸員らは館内に泊まり込み、被災状況の調査・記録に走り回った。2年後、館の再開と同時に実現した常設展示「東日本大震災の記録と津波の災害史」は、その活動が形になったものだ▼当時集めた被災物は、人々の暮らしの記録を再生させる装置として陳列。被災地の写真には詳しい状況説明とともに撮影者の思いを記した。写真を中心に約400点が東京の目黒区美術館に送られ、3月21日まで開催中の「気仙沼と、東日本大震災の記憶」であの時の惨状を再現して見せる▼毎年秋の「目黒のさんま祭」に魚を提供する縁で、気仙沼市は目黒区と友好都市の関係にある。区美術館の佐川夕子学芸員は「震災から5年たって、報道が少なくなると首都圏では被災地のことを忘れがち。震災の状況を伝えて減災意識を高めることは大切」と話す▼訪れた人は真剣な表情で雄弁に語り掛ける展示物を見詰めているという。東京もまた、直下型地震など災害の危険と無縁ではない。関係者は震災を自分のこととして考える契機に、と願う。

 

【2月の読書「第2楽章 福島への思い」(徳間書店)吉永小百合編1,700】 

女優吉永小百合さんが東日本大震災で被災された福島の方達の詩を朗読したCDを同名で3月11日に発売しています。
今回薦めるのはCDの内容を書籍にしたものです。吉永小百合さんは1997年6月21日「第二楽章」(広島編)、1999年7月23日「第二楽章 長崎から」、2006年6月21日「第二楽章 沖縄から」と3作品の朗読をCDにしています。CDのテーマ、内容はこの国の行方を考えさせる内容でした。今回は福島で被災された詩人和合亮一さん、佐藤紫華子さんら8人の詩を紹介しています。この国の行方を考える大事な問題として福島があります。男鹿和雄さんの絵と詩から伝わってくるメッセージは必ず生きるヒントになります。

 

【2月後半から3月の主な行事】

 2月27日(土)PTA役員反省会•懇親会  

 2月25日(木)〜3月1日(火)1•2年生第5回定期試験

 3月11日(金)〜15日(火)2年生修学旅行 沖縄 北海道 九州 屋久島 シンガポール

 3月11日(金)1年生進路指導「なるには講座」   

 3月14日(月) 1年生系列校学泉大学短大見学(豊田•岡崎)

 3月16日(水) 1年生創造発表会  安城市民会館サルビアホール

 3月17日(木)1年生合唱コンクール  安城市民会館サルビアホール

 3月18日(金)3学期終業式•修了式